
1枚目の写真が、伐採した木の切り口です。触ってみると、しっとりしています。年輪を数えてみると、87本でした。植えてから87年も経っているんです。87年前というと、昭和3年ですよ。
ところで伐採した後は、この山では葉枯らし乾燥を行います。葉枯らし乾燥とは、伐採した木の枝葉を残したまま置いておき、葉の蒸散作用を利用して木材を乾燥させるやり方です。伐採後1〜2ケ月間葉枯らし乾燥します。
ですから、本来ならこのまま置いておくのですが、今回は伐採した木を運び出すところまでを見せていただきました。

2枚目の写真は、根元部分の一部はまだくっついていますのでそれを切断しています。木の上の方では、枝を切り取る作業をしています。
それにしても、真っ直ぐですよね。真っ直ぐに育つ木の、直ぐ木(すぐき)が杉の名前の由来だといわれているのが分かりますね。
でもよーく見ていただくと、わずかに曲がっています。なので、この木は根元から長さ2mのところでまず切られました。その次はまっすぐなので6mに、という具合に切っていきます。長い材料をとるというのは、大変なことなのですね。
普通の横架材(梁・桁)は、4m・6mという長さが標準ですが、今まで設計した家では8mという長さはごく当たり前に何本もあって、家によっては11m・最長で12mという梁も使いました。そういう材も、山での見えない苦労があったのですね。
それでも、構造・強度を優先して考えてくれる林業家たちなので、苦労を惜しまずに長い材を用意してくれることも、丈夫な家になる特徴の一つなのです。

3枚目の写真は、丸太を持ち上げて切断しているところです。そして、切断された丸太を運搬する機械に載せているのが、4枚目の写真です。
このようにして、木を伐採して運搬するという工程までを見せてくれた今回の伐採ツアーでした。

山で実際に伐採を見学して・・・、やはり感動しますね。何十年も経ってここまで大きくなったのに、かわいそうでもありました。でも、家の構造材として一緒に住むご家族を守る役割をするために伐採するのですから、一人前になった証です。
それよりも、せっかく構造材になったのに、その家(その木)を20年や25年で壊しまうことの方が、本当の意味でかわいそうなことをすることになります。
普通に家を建てると、木の育った年数や山の苦労を考えることはないと思います。それを知らないと木の家に住めないわけではありませんが、つくり手が住まい手にそういうことを伝えていくべきだと思います。
私自身も、一昨年この山の木を使って家を建てました。伐採ツアーから帰宅し、木の伐採・製材・乾燥などの作業をしている林業家の皆さんの姿を思い浮かべながら、わが家にたくさん使ってあるこの山の木を見ると、より愛着がわいてきたのでした。
草野鉄男建築工房
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